ベルグソンの言葉
「身振りを慎み、むだな言葉を惜しみ、滑らかに観念を表現し、言い張ることは無く、自分の周りに来て停っている翼のある思想をあまりにも騒々しい音で驚かすことを恐れているかのように低い声で話す彼は、自分の話を遠くの人にも聴いてもらうためには、ただ大変純粋な音を出しさえすれば良いのであって、そんなに声を張り上げる必要はないと考えていたようである。しかしこれほど自然に、これほど静かに、これほど頑固に、他人の権威に反抗した精神はなかったのである」
(白水社1965年刊ベルグソン全集第7巻所収「ラヴェッソンの生涯と業績」より)
この講演の言葉は実は自分のことを言っているに違いない。
フランスの哲学者A.ベルグソンの名前は、チェリスト・P.カザルスの対話録「カザルスとの対話」の中で初めて知った。カザルスがパリ在住当時親交のあった各界の著名人のうち、このフランスの哲学者との対話を印象深く思い出し(演奏の終わった後の心の中でおきることをベルグソンは知りたがった。カザルスは、そこにあるのは有る黄金の重みのようなものだ、と答えている)慎み深く謙虚なこの哲学者を世界の良心として称賛している。
小林秀雄も何度もベルグソンについて書いているし、心理学や科学についての言及も多く、読みやすい内容でもあったので主たる著作とそのほか何冊かは読んだ。大学時代、うっかり試験の代わりのレポート提出を忘れて心理学の単位を1つ落としそうになった時(留年の危機!)、慌てて、郵便局のせいにして「ベルグソンの心理学批判(そんなものは実在しない)」なるレポートを1日で書いて速達で勝手に提出した想い出がある(^_^;) 教授も嘘とは分かっていたと思うがお情けでセーフ。
ベルグソンの本は、私のような凡庸な頭には難解だが、それでも芸術に造詣が深く、日常体験を比喩に頻繁に用いて、表面上言葉は平易な内容で、心打たれる言葉がちりばめられている。「哲学的直観」「全てを持続の相の下に」と言う言葉が有名。生活が落ち着いたら少しづつゆっくり読み直したいと思う本の1つ。
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