今日は朝から何度もドヴォルザークの「わが母の教え給いし歌」をチェロで弾いていました。だいぶ以前、年老いた母にチェロの小品を弾いて聴かせた時これが一番(他に比べればでしょう)良かったらしく、今のをもう1度と言われた曲です。
これまでは、この曲のタイトルの意味は、子供が小さい頃に母親が教えた歌なのかと思っていましたが、千住真理子さんの演奏をラジオで聴いて違和感を覚え、自分が弾く場合に、あんな風に技巧を凝らしたりしないなぁ、もっと素朴に情愛を込めないのはおかしいなぁと思って調べてみました。
ちなみに現代語訳では「お母さんが教えてくれた歌」と間抜けな訳になりますが、「おしえたまいし」と文語体で記すほうが感じがでますね。
これは、「ジプシーの歌」Op.55の中の第4曲。『ジプシーの歌』は、チェコの詩人アドルフ・ヘイドュクが綴った詩にドヴォルザークが曲をつけたもの。
三省堂「クラシック音楽作品名辞典」によれば、タイトルはチェコ語で「わが母の教え給いし歌 Kdyz mne stara matka zpivat」ドイツ語で「老いた母が私に歌を教えた時 Als die alte Mutter mich noch lehrte singen」が併記されています。
老いた母が口ずさんだ歌は、きっとその母の幼年時代や少女・娘時代、まだ若く沢山の愛情にはぐくまれて幸福であった時代の美しい想い出の歌に違いありません。歌は人生そのもの、命そのもの・・・そう思ってこの曲を何度も弾くと涙が止まりません。やがて肉体は滅びても、生命はこのように伝承される・・・
歌詞はこうです。
「昔、年老いた母が私に歌を教えてくれた時、その目に涙を浮かべていた。
今、私も親となり、その歌を子供に教えようと しているが、
日焼けした頬に、いつのまにか同じように涙が流れる」
5/28 夕方、チェロの倉田先生から電話あり、来月こられるので、これ幸とこのドヴォルザークの曲を私の為に弾いて下さるようにお願いした所、「あれは難しいから駄目」と「何故か、難しいので、一生弾けないかも知れない」と断られてしまいました。残念。秋には浜離宮ホールでリサイタルが予定されているので、そこで弾く曲をお試し披露して下さるとか・・・
「わが母の教え給いし歌」、いい曲ですよね〜。私も大好きです。そういう歌詞だったとは・・・感慨深いですね。きっとお母さんも、そのまたお母さんから歌ってもらったんじゃないでしょうか。だから涙している。母から子に受け継がれていく、その土地の民謡のような素朴な曲のような気がします。
ちなみにこの曲、31選に載っているのでチャレンジしたことがありますが、完成は先延ばしになってます。やはりムズカシイ。ま、私と倉田先生の求めるレベルは異次元にあると思いますが・・・(笑)。
投稿情報: まかべ | 2006-05-31 06:52
まかべさん こんにちは
ほんと良い曲ですよね。でも不思議な感じの曲でもあります。悲しいけれど、悔しさや恨みの感覚は全くない、澄んだ悲しさ、モーツァルトのような淡々とした悲しさ、そして遠い彼方への懐かしさもこもっている・・人はたった1人で生まれてきてたった1人でこの世を去って行く、そう言う絶対的な運命を感じます。人は孤独であることからは逃れられない、でもそれだけでは終わらない・・・
ピアノの伴奏に魅力的な装飾音がついていますよね。素朴なメロディを効果的に飾っています。これは何なんでしょう。私には、赤ん坊のゆりかごに付けられた鈴、年老いてロッキングチェアを揺らすたび聞こえる小さなきしみ音のように思います。
優しさにつつまれた曲ですね。
投稿情報: Goshu | 2006-05-31 08:50
「わが母の教え給いし歌」の作曲者を探していて、ここにたどりつきました。演奏会のアンコールでチェロの演奏でこの曲を聴いたことがありますが、いい曲ですね。チェロの音色で聴くのが一番です。ステキなペンションでセロを思いっきり弾いておられるのでしょうね!またお邪魔します。
歌詞もありがとうございました!!
投稿情報: neko | 2006-06-04 17:08