音程が悪い、これは弦楽器奏者の永遠の課題と言ってくれるのは先生の慰めで、レベルの問題があるでしょうが、長年みてきて、アマチュアで普通に音程の良い人は2割いるかいないかではないでしょうか。私なんかも情けないほど音程が悪い。録音するとよく分かる。これまで改善のアドバイスをまとめてみると・・
1)そもそも練習の際の基本的なこと。先ず、ゆっくり静かに調弦(このやり方はご存じでしょうから省略)。それから練習前のストレッチ。調子が悪いなと言うときは、1音4秒くらい全弓で半音階をゆっくりとビブラートせず指並べ(ある程度できた人は、逆にたっぷりビブラートして柔軟性を持たせる)。人間の指は通常チェロを弾くようになっていないから、先ず、広げましょう。正しい音程をとれる柔らかい筋肉の準備ができました。ストレッチに役立つ、フィヤールのエチュードは前にアップしました。これはとても有効。
2)音階練習。親指の位置が重要です。中指の裏側に位置する。抑えるのでなく、その位置に触っている程度。拡張ポジションの時には、親指の位置も半音ずれる。初心者に多いけれど親指でつっかえ棒をしないこと。
3)手の形というか型。これが一番難しいけれど、音程の悪い、崩れるときは、これが原因であることが多いです。ポジション移動しても手の型は崩さない。小さな卵を中に入れているかのように丸い形。手首をつぶさない。点検。ウエルナーの教本に載っている「ポジション表」のエチュードが便利。この後、毎日1曲、バッハの無伴奏曲のどれかをやると音程はしっかりしてきますね。やることはまだまだあって、三度の音階練習も、最初は大変ですが、慣れてくるととても役立つことが分かります。こういうのはきりがありません。
4)ハイポジションで移動するときは、ヒジから手の甲が平らになっているように、ぎくしゃくしないでレールの上を滑るように指板の上を正しい型のまま移動する。上行するだけでなく下行もやってみる。
5)後は、もっぱら良く自分の音を聴くこと。ゆっくり弾くこと。時々重音を弾いて確認する。うっかり、それらを怠っていい加減に弾くと、間違った音になれてしまいます。耳が悪くなります。耳はチェック装置、監視員、審判、裁判官、これが狂っていたら、犯罪行為が当たり前になる。たまに録音して最高裁判所から差し戻してもらいましょう。
6)それでも音程が部分的に悪くなるときは、力が入ってしまったときですね。正しい型になっていれば力はいらないので、すとんと指を落としましょう。指は素早くあげることが大事だとナバラは言っていたそうです。あげた指は自然に落ちる、あげれば落ちる。だから、抑える意識よりあげることを意識する。これは吸うことより吐くことを意識して呼吸する方が良いのと同じ理屈。場所によっては、指の第1関節をそらすようにすると安定することもあります。
7)時に、少人数の室内楽(チェロは1人)をやると、否応なく音程に気をつけるようになります。逆にオーケストラなど(チェロが複数)では、音程は更に悪くなる人が圧倒的。オーケストラにはいるのは楽しいけど、気をつけないと、音質も音程も救いがたく悪くなるようです、そう言う人を沢山知っています。基本ができないうちにオーケストラにはいるのはやめた方がよいですね。又、オケに入っても個人レッスンは続けるように。
<音程のツボ> 興味深く拝見しました。なかなかツボを心得たコメントだと感じ入りました。
● アマチュアで普通に音程の良い人は2割いるかいないか
一番判断に迷うのは、良さそうに聞こえる音程でも、やや下がり気味に聞こえることが多いことで、これは矯正のしようがありません。
一つには教師が練習進度を気にするあまり(指の回りを優先して)音程指導を怠るからではないでしょうか。どんなに指が回っても、不快な音程は一生付いて回って、「上手な下手糞」と言われるようになってしまいます。(プロも同じ?)。
これを根治するには、おっしゃるような「手/肘の形」の矯正や室内楽も有効ですが、私は重音の訓練と声楽のハーモニー(ノンヴィブラート)を良く聞くことが大切ではないかと考えます。
私は、弦カルテットをやるときには、調弦の後、讃美歌のようなハーモニー重視の曲を練習するように提案するのですが、残念ながら少数意見です。
録音を取るのは有益な方法ですが、音程に無関心な人ほど、録音を聞かない傾向にあるのは悲しいことです。
音程が悪い、と指摘されると、俺の指の形や指板上の位置は正しい、と答えにならない答えをする人がいます。
● オーケストラなど(チェロが複数)では、音程は更に悪くなる人が圧倒的。
同感です。
特に、二人で弾く場合、どちらの音程が正しいのか分らなくなり、結局、共倒れのような形になってしまいます。
林光先生は、何かの書物で「口先だけで音程の悪さを指摘するだけでは駄目だ。何故音程が下がってしまうのか、原因を究明しなくてはいけない」と言っておられます。
楽典に「音律論」というのがあり、これを勉強すれば音程が改善されるかのように言う人がいます。
私の実感は、音程の正しい人の音を分析してみたら、音律論に合致していることが分る、というものです。
しかし、これを言うと、音程の正しさは生まれつきのものだ、ということになりまして周囲の顰蹙を買いますので、あまり口にしないことにしております。
権兵衛
http://d.hatena.ne.jp/e-tsuji/
投稿情報: 権兵衛 | 2008-05-17 16:50
権兵衛さん こんばんは
音程の狂う理屈とメカニズムを知って、後は注意力だけですね。私なんか理屈は分かっちゃいるけどついつい注意を怠るものです。でも、少しづつ改善しています。だから誰でも必ず上手になれると思っています。努力さえすれば・・・
投稿情報: goshu | 2008-05-17 21:13