歳をとるごとに1年が短い、というのは誰でも感じること。この先いつまで働けるのだろう、いつまで体が動くのだろう、いつまでチェロが弾けるだろう・・・先の事は誰も分からない
先の自公政権の失政で、年金の不払いが発覚しても70,80代と言う高齢の人に対しても、支払は2年後、3年後になるなどと言うとんでもない話が前にあった。
高齢になってからの1年の重みはどんなものか、人の時間の重さや密度が加齢と共にどうなっていくのか、これの指標のようなものがあればよいのだが、自分で体験して気がつくまではなかなか分からないようだ。でもそれでは手遅れというもの。
チェロに関して言うと、80過ぎても室内楽を楽しんだりは出来るらしい、ただし、音は小さくなると言う話だ。もっとも青木十郎さんのように90歳を過ぎてから、バッハの無伴奏の5番や6番を演奏し録音する人もいる。この方は、若い頃から、高齢になってもチェロを弾き続けられるように訓練したらしい。どういう訓練かは知らないが、脱力して弾けるというのは基本だろう。それ以前にチェロの構え方も、老人向きの姿勢というのがあるはずだ、特にエンドピンの長さなど。私も3年くらい前から意識してチェック、エンドピンは昔習ったときのように短めにして楽器を縦気味にしている。この方が無理がないような気がする。音のためにベストではなくても、体に無理がない負担の少ない姿勢や奏法を早くから身につけることは将来のためだ。
50過ぎてからは10年単位で体力はガクッガクッと落ちていくと聞いているしそうも感じているので、今から、80過ぎの老人が弾くように演奏する訓練をするのが良いと思う。富士山に楽に登る方法は、最初から、疲れ切ったように老人のようにゆっくりと登る事だ。スピードを出し不規則にどんどん登っていった若者を8合目くらいで老人が抜いていくと言う光景はよくみる。
歳をとってから楽器を始めた人の不幸は、体が硬く頭が硬くなってから始めた不幸に加うるに、残りの時間が少ないと言う不幸、ただ少ないだけでなく急速に減衰するという不幸である。だから、よく考えなくてはいけない。ばりばり弾くのも良いが、無理してそんなことしてもあっという間に弾けなくなるだろう。長い時間チェロを楽しむためには、難曲に挑戦するより、質の良い音楽、音色を体に良い楽な方法で習得する事だと思う。
2005年に神戸で開かれた国際チェロコングレスで、80を過ぎた巨匠シュタルケルが、弟子の堤剛氏とボッケリーニの2本のチェロのためのソナタC-durを演奏した。音色や音量は確かに小さくなっていたが、骨格のしっかりした音楽、鮮明なアクセントなどで音楽的にかえって分かりやすい楽しめる演奏になっていて、朗々と弾く堤氏をリードしていたと思った。歳をとったらこういう風に弾かなくてはと思ったものである。そういう音楽の良い趣味、幾つもの欠陥があっても音楽の神髄を伝える音楽性、何よりその意志、モノクロ写真であってもカラー写真に負けない真実性・・それはプロアマを問わず歳をとっても鍛えていけることではないだろうか。
”たくうん”と申します。
七十歳台半ばちかくなって、はじめてチェロに手を染めました。九年目にはいりました。月一回ほどのレッスンが生き甲斐となりました。まさに”モノクロ"写真そのものであります。
お尋ねいたします。
A.SCHROEDERのエチュード1.2.3.のCDの類は、市販されているのでしょうか?一歩でも前進致したくじんじます。
投稿情報: たくうん | 2010-10-29 09:53
たくうんさま
そのお歳になっても精進されているとは、素晴らしいですね。敬服します。
お尋ねの件ですが、シュレーダーに限らずエチュードの録音は殆ど知りません。シュタルケルがいくつかのエチュードを録音したCDは市販されていますが、その中にいくつかはシュレーダーに載っているものもありますが、ご希望のようなものはないと思います。
そういうCDを出す事も有益ですよね。やってくれる演奏家がいるかどうか、作っても売れるかどうかと言う問題がありますが・・・
投稿情報: goshu | 2010-10-29 22:10
goshuさま
早速のお返事、ありがとう存じました。
CD,無ければ無いで、これまた励みとなりますね。
それよりも、おぼつかない手ではじめて発信したコメントなるものが現実にお手元に届いたことが、驚きとともに、この上ないよろこびでもありました。
ありがとう存じました。
一層のご活躍をお祈り申し上げます。
投稿情報: たくうん | 2010-10-30 11:27