2月11,12日は、日本チェロ協会主催による「第2回チェロの日」1日目は8人のチェリストによる8曲のソナタ。2日目は、マスタークラスレッスンとオーケストラスタディ、そしてサプライズ演奏会のあと、チェロアンサンブル4曲というプログラム。
その中で一番印象に残ったのは、ルイス・クラレット氏がレッスンの最後の方で語った「私の言うことも他の先生方の言うことも聞いて、けれど最終的には自分の耳でよく聴いて判断するように」 という言葉。何が正しいかは自分の音を自分で聴いて判断する、それは、若い音楽家への厳しいけれど愛情のこもったエールだ。私なんか関係ないけど、涙が出そうだ。
さて、他の事も忘れないうちに断片的だけれど、まだ覚えているうちに書き留めておこう。いつも書くが、論語の冒頭は、「学んで時にこれを習う、亦悦ばしからずや」(学んでは適当な時期におさらいをする、これは楽しい事だ)で始まる。世の中には色んな楽しみがあるが、学ぶことが第1の愉しみ、喜びだ。
「音は1つでは音楽にならないが音と音がつながって音楽になる。そのつながりをもっと意識するように。音の方向性とかフレージングとか・・」
「弓がぐらぐらしないように、(といって、先生の持つ弓の先端を生徒に持たせ回転させるように言うがびくともしない。代わりに生徒の弓の先端は簡単にぐらぐら回転する実験)」
「ボーイングの時、肘にも弓が付いているかのように弾く事」
「バナナのように音を作る」
「首の後ろに緊張して力が入っていると硬い音になる、リラックスすること」(これも実験すると明確に音が変わる)
全てが終わった後、いつもの仲間と「反省会」。倉田澄子先生も「ブログで読んだわよ、反省会ってのやるんでしょ?」とくっついてきた(^_^)
倉田先生の隣に座るように何人かに声を掛けたがみんな嫌だというので、仕方なく私が隣に座って、色々と教えていただいた。(私のお勧めを断るなんて10年早いぞ、キミタチ)倉田先生は大変優しく、いつも真正面を向いて相手を理解して一生懸命ベストを尽くす方だから、どんなことでも聞いた方が得だ。 残された人生は短いのだ、遠慮してる暇なんてない。
ついでに言っておこう。「3歩下がって師の影を踏まず」という言葉があるが、それは、無闇に馴れ々々しくならず一定の距離を保ちつつもいつも師のそばにいてその言葉を聞き逃すな というのが私の解釈。講義や授業ばかりでなく日常の様々な事柄に即して語られる知恵の方が分かりやすく、良く伝わることもあるから。ちなみに、私は学生時代これを実践して恩師(私の専門は心理学だったが実際の恩師は哲学科教授)の鞄持ちをして授業の教室から研究室まで一緒に歩いたものだ。高卒以来、何故か私は師に恵まれた(人生において師に恵まれると言うことはとても大切で貴重な事だと思う。考えるに、師に恵まれるということにも条件がある。ぼんやりと生活して恵まれることは決してない。このことは別の機会に)
私が尋ねたのは、左指と指板の角度の問題。指板に直角に指並べをするように言われるけど・・「あぁ、それは最初の段階ね、だけれどもハイポジションなんかではそれは無理、トルトゥリエのようにはできない、それは自然に、こんな風に(傾けても良い)。けれどこんなのは(ねじったり、突っ張る)のは駄目、手を前に出して、そのまま上げて・そう、それで自然でしょ?」
クラレットさんの弓の回転の話について、「指を毛箱にぺたっと付ければ良い」 (これは、基礎レッスンビデオの最初の弓の持ち方(指の置き方)についてで、指を弓に添え、おいでおいでをするようにして、弦をギッと言わせるという方法)余談だがトルトゥリエはこれを発展させてお祈りのポーズの練習も考えた)プロの方の手を素人がみていると、手首はグニャグニャ柔らかく、ひらひらふらふらしているように見えるけれど、結果としてそうみえるだけで、実は、しっかりした部分と柔らかい部分とに分かれている。
「テクニックというのは、こういう音が出したいといつも思っていれば後から付いてくる。その逆じゃない。 」
その他、チェロの姿勢とか生徒の個性・良いところを守ることとかなんとか・・・後は企業秘密(じゃないけど、忘れた)
ついでだから、食事の時間とか待ち時間とかで他のアマチュアの人達と話していた事についてもメモしておきましょう。
「音程をよくするためには、指並べの時の考えの中心を人差し指でなく、薬指中心に考えた方が楽に指が広がる」
「弦を押さえるのは、力ではなく、指を落とすスピード」
「弦を押さえる指の感覚のあれこれ・・指の真ん中に空気があってそれをつぶすような柔らかい感触、タコの吸盤のように、ぽこぽこと・・」(以前の堤先生のレッスンの話)
「豊かなフォルテの作り方は、指を緩める」(堤先生の企業秘密(^_^))
「強い音を出す方法は幾通りあるか・・」
「音楽によってどれだけ音色を変えられるか・・」
「もっと上手になりたい、もっと良い音を出したいと思って努力しないのはアマチュアの名に値しない」
・・・というわけで、チェロ三昧の2日間でした。こういう事が年に1回はあるというのはありがたい。この会を企画運営して下さった、日本チェロ協会の関係者の方々、サントリーホールの皆さん、ありがとう。
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