弓の毛がだいぶ伸びてきた感じなので、毛替えに出かけた。長い間弓の毛を交換しないでいるとどうなるか、キューティクルがはがれて松脂ののりが悪くなる?、それは実はたいした影響はないようだ。どうも滑る感じがする、・・・これは、毛のせいではなくてむしろ松脂の付けすぎで毛に堆積してしまっていることが原因で、歯ブラシでしごいてとってやれば良い・・・等々、色んな説がまことしやかに言われる。
ともかく、弓専門の職人さんの元へ。弓の毛替えが必要と言われても、どこに行ったら良いのか分からない(楽器の調整と言うことでも同じように、どこにどう相談したら良いのか分からないという人も多いと思うが)という人も多いだろうから、ともかく、紹介することにする。
ハッキリ言って、「早い、安い、上手い」それが、新宿初台にある「香野弦楽器店」。
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ここには、沢山の名だたるプレイヤーが訪れるし、全国から郵送されてくる。見ながら待っていると30分ほどでできあがり、チェロ弓は税込み6500円だ。飛び込みでも良いが、混んでいることもあるから、事前に電話で問い合わせ予約をして行った方が賢明。今日も3時過ぎまで予約でいっぱいだった。
実はこの人、昔、「渋谷弦楽器」という有名な店にいたことがある。20年くらい前だろうか、1度、毛替えをしてもらったことがある。その後独立したのだ。2年ほど前、亡くなった母の遺品である、象牙の三味線バチから、チェロの毛箱を作ってもらおうと、人から紹介されて訪ねたことがあった。この時、この職人の態度が立派だった。まず、象牙はチェロ用には重すぎること、更にそのバチで作るには材を削るにはほんの少し大きさが足りなかった、それより、「私も職人だから分かるが、このバチはとても丁寧によく作られている。これを壊すのはもったいない」と言ったのだ。私なんかは、ただの象牙の材料としか見ていなかった、どうせ使わないのだから、有効活用した方が良い、位の考えだ。けれど、そうか、ただの材ではない。職人の魂が宿っているのだ。自分の都合、損得、有用無用など、自分中心の考えで、事を行うのは、人類の歴史上、戦争や侵略を通じて世界中で文化の破壊が行われてきた事を考えれば、恥ずかしいことだ。
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