コンサートは、白鳥、夢のあとにの2曲から始まる変わった?プログラムだ。続いて小林幸太郎さん編曲のドビュッシーの小組曲、一体あの曲をチェロでどうやって弾くのだろうかと思ったが、豊かなチェロの音色が印象的でなかなかの編曲だ。そして、ブリテンのソナタ。後半はフランクのチェロソナタ。アンコールは,カッチーニのアベマリア、ピアソラのリベルタンゴだった。ジェルネさんのピアノもチェロの音がハッキリ聴き取れる良いバランスと音色で2人の息はぴったり。宮田さんのチェロは,テクニックはもちろんだが何よりその音色が魅力だ。柔らかいとか甘いとかではなくて「ふくよか」(ふっくらと良い香りを漂わすという意味で)という言葉がぴったりだと思う。フルニエやトルトゥリエなど往年の名チェリストたちはそれぞれ,その音を聴けば誰かすぐ分かる個性があった。その後の上手かも知れないが凡庸な?チェリストが多い中、宮田大さんは個性(人間性)のある音色とスタイルを持っている気がする。私にとって楽器は音が第一だ。音が良ければ曲なんか何でも良い位だ。何しろカザルスのたった1音でチェロを始める気になったのだから。大体,人間だって一目見たらどういう人か見当がつく。キリストやお釈迦様は遠くからちらっと見ただけで人をガラッと変えてしまう力があっただろうと思う。くどくどと説教されたり議論しなくてはいけないなんて事はない。言わば禅僧の「一喝」である。法竹(ほっちく)という禅の一派があるが、竹を切っただけのもので音を出す、曲を演奏するのが最終目的ではない,音に座禅するといった趣である。それは極端な話だと思われるだろうからまぁモノの喩えとしておこう。
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