この辺りは、昔よく来た所なので懐かしい。ここは博物館の横。昔、古美術愛好家でここを知らないのはモグリと言われた有名な旅館「日吉館」があったところ。古美術愛好家ばかりが集まる宿で、ここで、色々な情報を得たものだ。日吉館は伝説的な宿で1冊の本になるだろう。廊下には大きな張り紙がしてあって、なじみの客が書いたのだろう、日吉館の利用の仕方、注意事項などが載っている。各大学の古美術研究会は、ここで合宿するのが恒例だし合宿の際は、それぞれ手伝いを出す事に決まっていて調理・配膳・掃除などを担当するのが当たり前。おばちゃんが病気で入院した時期があったが、その知らせは全国に伝えられ「日吉館を愛する会」というのが出来て、交代で、宿を維持するためのボランティアが集まった。
(また、昔話で恐縮ですが)高校生の頃、奈良が大好きで年2回ほど来ていた。仏像を見て歩く旅だが、お金がないし宿の予約にも慣れていないから、日吉館に飛び込みで来た。おばちゃんは慣れたものでどこの学生さん?と尋ね、取りあえず、勉強してきなさい、と言うことで、夕方戻ってくると寝場所を指定される。もちろんいつも満員だから寝る所は、玄関奥のおばちゃんの居間兼寝室。おばちゃんは板敷きの廊下の隅に布団を敷いて寝るのが常。素泊まりで450円。朝、それも払えないようだと、次で良いよと言われたり・・。夕食は宿で取るお金はないから、もちいどの通りの入り口にある「三好野」という店でびっくりうどん25円というのを頼む(当時の蕎麦屋のたぬきうどんは60円ほどだったからどれほど格安か分かる)これは今でもやっているもので素うどんにうどん2玉入ったボリュームたっぷりのもの。素うどんと言っても油揚げやかまぼこなどが入っていておいしい。現在でもやっている。朝食は、町でコッペパンとジャムを買い、それを食べながらあちこち歩き回った。奈良には良い食べ物屋がないとずっと思ってきたが、考えてみればまともな店に入ったことがないことも一因だろう。泊まる宿がない(お金がない)時は、京都駅前の電話ボックスで寝ようと新聞紙を用意して夜行ったらすでに先約がいたりして、しょうがないから深夜喫茶で過ごしたり、日本海に行く夜行列車を悪用して仮眠をとったり・・お金がないので色々思い出がある。旅行というのはお金がなかったり、雨に降られて道に迷ったり・・そういう時のことほど思い出に残るもの。
午後は、駅前からバスで30分ほどの浄瑠璃寺に。本堂の九品仏の中で秘仏吉祥天が開扉されている。9体の仏像はそれぞれ同じ形同じ姿勢だが、少しづつ表情が違う。本尊むかって右の仏様が一番静かで気に入った。(私の好き嫌いなんかどうでも良いことだが。)
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