技術的には、例えば音程の取り方とか訓練の仕方とかは、長年の経験から前にまとめた事がありますが、そのようにやれば効率的と思います。問題は、それが大切だって事が分からないだろうと言う事(^^;; 沢山の失敗の経験を積んだ人には分かるでしょうが、初級者には納得がいかないかも。
同じように、チェロを弾く、練習する心得みたいなものもあるかなと思いました。
歳をとった時の事は、その時にならなければ分からない。大学の時習った哲学者の樫山欽四郎先生は、人はいつも「そうであったか」とあとになって痛みとともに気づかされる、と言う形でしか真実を知り得ない、「あった」は意志の歯ぎしりである、と書いておられました。50を過ぎた頃から私は老後対策?としてなるべく高齢の方の話を聞くようにしていました。体力知力とも60歳、65歳、70歳、それから1年づつがくっがくっと落ちて行く。なだらかでなくがくっと落ちて行くとのこと。つまり色んなことが手遅れになりかねない。
チェロの場合でも、若い頃から訓練した人は別として、凡庸なアマチュアなら、多分、進歩できるのは65歳まで。チェロが楽しめるのは75歳まで。その歩みは富士登山に似て、上手になるほど、上に行くほど、一歩登るのに倍以上の時間がかかる、とすれば、60歳までに自分の考える頂上の8合目までは到達している必要がある。そこから逆算して今何をすべきか考える。といってもこれがどういう事かもきっと初級者にも若い先生にも分からないだろうと思う。
日本人は、凝り性で何でも追求する癖がある。特に男はその傾向が強い。しかし、それができるのも限界がある。どこかで日本人をやめて(^^)アメリカ人のように「楽しめば良い」「家族を大切に」と言う風に宗旨替えをした方が良さそうだ。その見極めも含め、60歳前後が勝負の歳かも。
何事も基礎が大切、それを知り、地道に正しい練習法、正しい心構えを持つ事が時間の節約になる(充実した時間を過ごすことになる)、これが分かれば一人前。一人前とは、そこから一人で歩き始められると言う意味。で、そう分かった時はチェロの練習が楽しくて仕方なくなるでしょう。たとえ山頂に達することができなくても山に登る事の意味を知りそれ自身が楽しい、一人前の正しい?チェリスト、「セロ弾きのゴーシュの仲間」といえるでしょう。・・と、私は考えています。
例によって連想するだけで余計なことですが(^^;;、ゴーシュは動物たちと出会って少しづつ自分を変えて行ったのですが、それは自分が望んでそうした訳ではなく、たまたま偶然、あるいはきっかけは半強制的でした。動物たちの率直な指摘にゴーシュは最初は腹を立てますが、「案外そうかもしれないぞ」と素直にもなる一面があり、それによって変革を遂げるのです。「セロ弾きのゴーシュ」は一生懸命練習したら上手になったと言うお話ではありません。自分より遥かに大きな力(その時は誰もそうだと気がつかないけれど、ほんとうのこと、まことの力。そしてそれに呼応する打ひしがれた心の中にも残るある種の素直さ)による内的な成長の物語です。ゴーシュはまだそのことを自覚していません。ただ、以前の自信もなくギスギスしたゴーシュとは根本的に変わった心根と言うものがあります。そのことには気づいている、そして、成功したコンサートの後、帰り道、夕焼けの中を飛んで行くカッコーを見て、「あぁ、カッコー あのときはすまなかったなぁ 俺はおこったんじゃなかったんだ」とつぶやくのです。美しいエンディングです・・
大変重みのあるお言葉です。頭の中に入れておきます。
所で、写真のスピーカーはTANNOYのスターリングですね。羨ましいです。(^^;
投稿情報: たこやきおやじ | 2008-09-25 18:08
ちょっと補足(^^;;
歳をとってからの人には、勿論沢山練習して技術を磨く事、肉体的訓練を懸命にやる事が大事ですが(さぼっている時間はない)、もう1つ、知る事も大切です。なるほどそういう事か、と言う事がたくさんあります。それは行きつ戻りつさんざん苦労して身に付くのです。と言う事は、一歩一歩を地道に進むだけでなく、行きつ戻りつダイナミックな過程をとる事が必要だと私は思いますし、指導者にはそのことを知って欲しいと思います。そのためにもアンサンブルは良い刺激と勉強になりますね。
大人はへそ曲がりが多いけど、楽器の習得は素直な人ほど早い。納得がいかないことがあったら反抗する前に子供の演奏を聞くのが一番の薬(^^)
投稿情報: goshu | 2008-09-25 20:04
goshuさんこんばんは
あ〜私の事だ〜 耳が痛い! 身につまされます!
今思えば ただただがむしゃらに練習して頑張っているつもりだった私ですが この半年ブログの世界を知って いろんな方の意見を聞き 情報を集め 知恵を働かせなければいけない と気づきました。時間無い分...
へそ曲がりのつもりではないけれど せっかく教えていただいても わかるのはずっと後!っていう事多いです。「なぜ?もっと早く言ってくれないの? いやいや言われてたのに わかってなかったんだ!」やっぱり素直さが足りないんですね。
goshuさんの厳し〜いご意見 これからも楽しみにしています。
投稿情報: Nao | 2008-09-26 00:39
naoさん こんばんは
「厳しい意見」ってそう読めますか?厳しいことを言ってるつもりはなくて、ただ、本当の事を書いてるつもりなんですけど(^^;;
多分、私がチェロを始めた動機が多くの人と違うからでしょうね。(だいぶ前まで皆私と同じような気持ちだと勘違いしていた)楽器を楽しむとか、チェロの音に憧れてとか、そういう楽しみ感覚がなかったから。
少し書き方を変えなくては・・・私がずれてる事を自覚しなくては(^^;;
投稿情報: goshu | 2008-09-26 01:11
いえいえ変わらないでくださいね。
本当の事...的を射ている(グサっ!)...だから自分にとって厳しいんです。これからも素直に受け入れたいと思います。
でもgoshuさんの「多くの人と違うチェロ始めた動機」って??? お聞きしたいで〜す。
投稿情報: Nao | 2008-09-26 08:48
Naoさん
チェロを始めた動機についてはあっちこっちに書いているのですが(^^;; 私の場合は、人から借りたはじめてのチェロのレコード、カザルスのドボルザークのチェロ協奏曲、さーさー言うノイズの中から、突然、チェロのアタックが始まる。そのたった一音がすべてです。これは禅の高僧による一喝ほどの、雷に打たれたような衝撃でした。チェロがどういう楽器かもよく知らなかったのに、今更弾くのは無理とかどうだとかは一切考えず、どうしてもチェロをやろうと思いました。
投稿情報: goshu | 2008-09-26 15:36