チェロの音色の好みは人それぞれだけど、私のフレンチチェロは大きなバイオリンって感じで,イタリアンは小さなコントラバスって感じ。世の中の傾向はどうやら,バイオリン系、というか高音域がくっきり明るく飛び抜ける感じが良いらしい,だから、エヴァとか細身のソリスト弦が流行る。
けれど、両方の対照的な楽器を弾き比べると,やっぱり、私の好みは、小さなコントラバスのようなチェロの音が好きらしい。ノイズ成分がある一方倍音も豊かで、周りの空気と溶け込み,室内楽では、他の楽器が気持ちよく響く音場を作り出す,という感じ。低音がつまらない楽器は,後がどんなに良くても魅力に欠ける。その点、ゴッフリラーはすばらしい。あんな音を出したいとずっと思っているが,もちろんまるで実現しない。
一般的には澄んだ明るいよく鳴る音が好まれる。けれど、音として良くても,それが心に響くかというとまた別問題。BVSC(ブエナビスタソーシャルクラブ)というキューバ音楽を聴いたとき,調律の狂ったピアノ、しゃがれた声、抜けの悪い録音・・等々欠陥が多いのに、なんだか屋台の焼きそばが高級中華よりおいしいと感じるような,懐かしさ、共感を覚えた。結局は音楽もメッセージだから,ただ美しい音や完璧な演奏だからと言って感動するわけではない。特にチェロは人間の声に一番近い楽器と言われる訳は、音域だけのことではなく、バイオリンのような澄んだ明るいつやのある音色とは違う音を本来持っているからだろう。その音それ自体に、人間の声の持つメッセージ性があるのだと思う。もちろんピュアな美しい音も出したいが、一方で、それだけではない人間の声のような暖かみと幅のある音を出してみたいもの。
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