パガニーニMP3
冒頭のメロディだけなら誰でも気持ちよく弾けると思うが、リズム感と音の歯切れの良さ、どうやっても真似できない。弓の返しの見事さはため息が出る。こういう一見何でもないところが雲泥の差。当たり前だと思っても弾く気がなくなる(^_^) 素人だと(私もレッスンで注意されたが)、16分音符のところにスタッカートをつけたように弾いてしまうが、そんなものは楽譜についてない。ここを聞き分けて欲しい。ボーイングの基礎力。これをごく当たり前のようにやるところがすごい。ここだけ急に練習してできるわけじゃない、普段の基礎練習・・セヴシックやらねば・・(^^;)
ちなみにこの曲、勿論沢山のチェリストが録音している。それぞれ自由に名人芸を発揮してどれも素晴らしいが、学習者?にとって長谷川陽子さんの演奏は、すごい。
演奏がどうのという前に、まず音。最初の図は、見ればおわかりの通り。多くのアマチュアは、音の立ち上がりが遅く、雑音が多い。初級者の場合、アップボーだと、最初ちょっと遅れた上、かすっていきなりクレッシェンドする(そしてコントロール不能になる)傾向がある。ゆっくり弾いても同じで、アンサンブルでは後ろ髪を引かれる思いがする。ちょっと上手になってもあまり傾向は変わらない。
また、プロの方とアンサンブルすると、音の立ち上がりが遅いと言われる。ソロの場合はまだしも、アンサンブルの場合、いつも遅れて、「セロ弾きのゴーシュ」が団長にいつも怒られるように「君だけ解けた靴紐を引きずっているようなんだ」アンサンブルが合わないと言う点では、もう1つ問題があって、みんなとあわせようと思うあまり、人の音を聞く分だけ遅くなる。遅くなった上発音が遅いのだから話にならない。こう書いていて、自分でもイヤになる。アンサンブルでは、みんなと合わせて弾くのではなく、音楽の流れの中で予測した地点に向かって飛び込んで行かなくてはならない。聞いてからでは遅すぎる。
アンサンブルでタイミングが合わなければハーモニーは濁るし、そもそもこんな不安定なボーイングでは音程自体も揺れ動く。落ち着きのないこんなふらふらした音で「歌う」事なんかできるはずがない。
「歌う」ためには、均一で平らでまっすぐな音が出せなければ、自由に扱う(歌う)事はできない。
最初の図の3番目のは、こういう風にぼんぼんと生き生きと弾いて欲しいと思うことが多々あるので。これが逆になっていることが多く、アンサンブルの時などは気になって仕方ない。ダウンでもアップでもしっかり弓の毛で弦を「噛んで」から発音するというのをゆっくりと練習して身につけたいもの。簡単そうだけど、どんどんでたらめに弾くばかりでなく、意識してゆっくり練習しないとなかなか本物の音が出ない。
例にしたパガニーニは難曲と言われるけれど、派手なテクニックを見せる部分を一生懸命練習するのも楽しいが、それ以前のもっと簡単そうなところに本当は問題が潜んでいる。それを改善しなければいくら派手なテクをできるようになっても、音楽として素晴らしい演奏はできない。
「セロ弾きのゴーシュ」で思い出したが、狸の子供と一緒に練習していて、子狸が「ゴーシュさんと弾いていると僕がつまずくようになるよ」と発音を注意され、「このチェロも悪いんだよ」と言い訳する。これは正しいと思う。調整をちゃんとしないと弾きにくいのは事実だ。弦の選び方、松ヤニの塗り方、色々研究する部分はある。まず、発音が悪いと言うことを自覚して、その改善の工夫、努力はするべきだ。でも、純朴な子狸に「何処が悪いのかなぁ・・」と言われると・・・(^^;) それにしても、宮沢賢治はほんのわずかしかチェロのレッスンは受けていないのに、よくよくチェロのことが分かっているものだと感心する。
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