私を含め、大概の人は、アップボーに問題、ぎこちなさがある。アンサンブルでも、アップボーになると妙なアクセントがついたりフラットに弾けずに膨らんだり色々と音楽破壊的な音が出ることが多い。そのほとんどは無意識でやっている。指摘されても、何のこと?と言う反応が多い。
力を抜いて腕の重みで弾け、と言われることが多いが、これは長島さんのバッティング指導と似たようなもので、球がこう来たら、ばしっと打て、みたいな(^^;) 一点に集中しろと言うことなのだろうが、集中できてもバットが振れなければ意味がない、理屈としては、あたる一瞬に力が集中すべきで、そのためにはその前は脱力できていなければならない、と言うことになる。そのためには具体的にどうするのか、どういう練習をすれば良いのかを教えてくれないと効率的ではない。
もっと良い音で弾け、正しい音程で弾け、素早く弓をかえせ・・・それはそうなのだが、そのためにどうすればよいのか、何をどう練習すればよいのか、それが肝心な事。
前出のクレンゲルのコンチェルティーノの第2楽章、中間のpiu mossoの低音から上がっていくアップボー、ここだけをみてみよう。ここは、f sempre フォルテを保って、と言うことだから、音がやせてはいけない。最初のダウンボーで深々とした音を出し、そのまま上に上がっていく。アップボーでは弓が速くなりがちだし、そうなるとただ音を触って出しているだけでpiu mosso の音楽的な動きまで表現できないし、フォルテを出そうと手首で押さえつけると豊かな響きは得られないし、簡単ではない。
原理的に考えて、腕の重みを弓毛の先まで伝えるとき、それを阻害する条件とは、手首であることは以前書いたことがある。一般的には手首が落ち込んで下がると重みが乗らなくなる。(肘が上がっても駄目)だから、手首の形は腕と平行に保つ、保つだけで余計な力はいらない。余計なことは考えず、ただ駄目と言われていることをともかくやらなければよい。
そして動きは、一番遠いところ、つまり肩甲骨の裏側からである。これについては、白鵬の強さについて書いた記事があるので、是非読んでいただきたい。初級者がどうして良い音が出せないのか、の一因は弦の抵抗に負けてしまうためだ。それで手首を使って弦を押さえつけようとする。本当は、指の柔軟性によって抵抗をいなすべきなのだ。力は最も遠い肩甲骨の裏側で発揮する。白鵬の下半身だ。音の立ち上げの瞬間の事についても示唆に富む。
これまで断片的に書いてきたことをまとめて、この楽譜を弾いてみると、その効果が分かると思う。弓はたっぷりとゆっくり動かすことができるし、音も豊かな響きでフォルテを保てる。
1)まずは開放弦で、弓の返しが遅滞なく素早く肘を下げて準備し肩甲骨の裏側から動かす意識で、行えることを練習する。
2)手首は腕と平衡を保って、形を変えないことだけ注意、腕は棒きれのようになる感じ。グニャグニャ動かさない。ただし、指の力は抜いて。こうすると、腕が固まったような、ギプスでもはめたかのような感じになると思うが、それでよい。よいかどうかはそれで出てくる音が証明する。弾きにくいとか変な感じとか思っても音がよければそれが正しくて、今までの慣れているだけの弾きやすくて楽器がまともに鳴らなくて音が駄目な奏法より良い。
3)肩甲骨の裏側(内側)から動かす意識、肘を下げ、脇を締め気味にする。(脇を開けると必要な筋肉ではなくただ肩の筋肉が動くだけになってしまう)
4)手首や弓ではなく、二の腕を横に押すような感じを保つ(決して手首で弓を押してはいけない)。この感じをつかむためには誰か補助者に二の腕を押してもらうとよい。ともかく、弓より遠くの筋肉、動きを意識することで、手首で何とかしようとする動きを封じることが肝心。(^_^)
お試しあれ。(本当は、この部分をより音楽的に弾くために左手の注意もある。ここはスラーでレガートに弾く事が肝心。そのためには、弓の返しを雑音なく瞬時に発音するように気をつけること、移弦するときには、前の音を響かせて、指を放さず重音を弾くように音を重ねていくこと。そうすることで正しいボーイングと相まって粘りのある豊かな響きを作ることができる)
私は、沢山考え、実験して、やっとこさなんとかこんな感じかなと言うのをつかんだが、正しいかどうかは分からない。もっと簡単な方法があるのかもしれない。間違いがあるかもしれない。こういうことも皆で考え実験して教え合うような機会があると良いと思う。とっくの昔からできてる人より、苦労している人たちの方が学ぶことが多い気もする。
ついでに言っておくと、私はレッスンで先生に褒められたことはほとんどない(^^;) しかしこの第2楽章は、文句なく「美しいし、音楽的」と褒められた。だから、まんざらデタラメでもないのだろうと思う。
チェロ弾き様
チェロの弾き方で壁にあたってしまい、検索していたところでチェロ弾き様のブログを見つけました。
今まで、右手は力を抜いて腕の重さでとか、ぶら下げるようにとか、手首を出すとか色々アドバイスは受け、プロの演奏を録画して見て・・それでもどうしても弾き終わると弓とあたる指がへこみ、上手い方たちの真似をしているつもりなのに鏡でみたらまったく違い、本当に悩みました。
チェロ弾き様の、(手首と腕が平行)を読んで、実践してみたところ、できました!目からウロコがボロボロ落ちました。
音も大きくなりましたし、今までより指で握らなくなっています。まだ良い音かはビミョウですが。
ありがとうございました。まだまだ初心者ですが日々練習して少しでも上手くなりたいと思います。
本当にありがとうございました。
投稿情報: nikimi | 2014-08-13 14:14
nikimiさん おめでとうございます。少しでもお役に立ったのなら嬉しいです。チェロは難しい楽器ですが、ちょっとしたことの積み重ねです。途中で元の木阿弥になることもしょっちゅうです。先を急がずほんのちょっとしたことでも大切に心がけていくといつの間にか進歩していると思います。ちょっとできてもその先には簡単には進めません。できたこと、簡単なことをしつこく体が覚えるまで繰り返す内に自然にその範囲が広がると思います。時間がかかるけど必ず進歩すると思います。
投稿情報: goshu | 2014-08-13 15:18