昨日は,サントリーホールの1室で、日本チェロ協会主催のチェロサロンが開催された。講師は長谷川陽子さんだ。最初、3人のアマチュアを相手に、バッハ1番のアルマンド、プレリュード、サンサーンスの協奏曲のミニレッスン。その後、参加者全員でチェロアンサンブルのレッスン。忘れないうちにメモしておこう。
例によって(^_^)、曲の音楽的な問題と言うより、基本的なチェロの弾き方が問題になる。(以下、思い出しながら書いてみるが、どの曲での注意だったかは違っているかもしれないがまぁ関係ないだろう)
アルマンドから
・音出しの最初に弓の準備をすること。特にc線など低弦のなりにくい弦の場合、弾きやすい弓元から音が出せるように、その前にボーイングの配分を工夫するなどして,弾きやすい位置から弾けるように準備する。
・低弦の2本は,鳴らしづらいので、楽器を少し左に傾けると良い。
・音が窮屈にならないように、腕を固めず、脇の下を広げるような気持ちで、上腕筋の内側を使うような意識で・・
・インテンポで弾くのは良いが,無理矢理枠に収めなくても、間があっても良い。和声の変わる所など,十分楽しんで,余韻の中から新しい音楽が生まれてくる・・余韻の中で神が降りてくる・・
プレリュード・・
・どんな楽譜を使っているのかとの問いに、ネットでダウンロードしたものでカザルス版と書いてあるとのこと。(多分、アレクサニアン校訂の最初のカザルス版だろう。私もこれで練習したので分かる、が、最後の数小節は、違っていた。)「そのボーイングはカザルス先生だから出来る事で、難しい(^_^)」とのこと。
・移弦の練習。弓が弦に常に直角になるように弾くのが基本の基。そのためには、手先をぶらぶらしないように腕全体で押したり引いたりする。そして、重音が鳴ったり鳴らなかったりするぎりぎりの角度を覚える、どちらかの音が大きくなったりしないように注意。
・自分の音を冷静に聞く訓練も必要。小さな音で耳を澄まして聴く。4回繰り返し練習するなら,1回は耳を澄まして小さく、後は演奏会モードで弾く・・とか。
サンサーンス・・
・速いパッセージなどで音が滑る場合、音符に言葉を当てはめてそれを言いながら弾いてみる「は・せ・が・わ・・」などと。そうすることでコントロールできるようになる。(速いパッセージとかでなくても、別の意味で、時に言葉を意識するのは良い方法だ、直接関係ないけど、アンパンマン「チェロヒキーさんと森のコンサート」で、チェロヒキーさんが演奏指導してこう言っている・「みんながやる曲も、言葉を心の中に思い浮かべて、歌うように演奏してみよう」)
・常に脱力 左指をすとんと落として音が出たら力を抜く、弦が浮かない程度に抑えるだけ。誰かが、指を払ったらぱっと離れてしまうように。
・前屈みで弾くと音がこもるので、首を上げて弾くと開放的に響く。曲による。
・発音がすべて、長い音符でも最初の発音が最後まで続く。乗せてから弾く、動かしながら弾かない・・
■ チェロアンサンブル
クレンゲル「即興曲」
・最初の何回かのフェルマータ、その長さと気分、句読点を変化させること。
・アウフタクトの意識。
・スタッカートは、この時代のものは短く鋭くなりすぎない、ある程度重みを持って、方向性を持って。
・中間のanimatoのところの三連符は、軽く歯切れ良く
・L'istesso Tempo は pp 曲中最も美しいその後出てくる有名なテーマの前の静かな部分。
その後、テーマが2回半繰り返される。変化を付けて 最初にめいっぱい弾くと息切れする。
ワーグナー「巡礼の合唱」(タンホイザーより)
・和声の変化を楽しんで
・次第に水がしみ出るように 少しづつクレッシェンド
そのほか、思い出したら追加することにして、全体として、長谷川さんのレッスンの様子も興味深い。まず、まくし立てるようによく喋る(^_^) 話したいこと、気がつくこと、教えたいことが山のようにあって溢れてくる感じ。きっと自身の演奏でも沢山の語りたいこと表現したいことがあるのだろうけれど、演奏は決して滑ったり焦ったり相手を無視したりすることはなく、楽譜というテキストがあるから、冷静な分析と音楽的霊感に任せて演奏するのだろう。「神が降りてくる」という言葉が印象的だった。
また、レッスンの中で、たびたび「何を意識していますか?」「どの辺に筋肉の力を意識していますか?」「どこに気をつけていますか?」と言った質問をしていた。聴かれたアマチュアは返答を躊躇してしまうが、逆に言えば、練習の時に、いつも何かを狙い、ポイントを絞って意識して練習をしていることが大事だと言うことだろう。ただ時間を沢山使って音を出しているのが練習ではない。
ソリストだからかどうかは分からないが、とても音の響きを大切にして、その響きの中から生まれてくるものを聴き取り、音楽を紡ぎ出すというのが基本だろうと感じた。楽譜をただ音にするのに精一杯で、音の余韻を楽しんだりする余裕がないのがアマチュアだろうけど、響きをもっと意識してコントロールする事が出来たらもっと上手に楽しめるようになるだろう。特にバッハではそれがなければ音楽にならない。
こういう人と少人数でもっと落ち着いてアンサンブルすることが出来たら音楽に必要な響き、間といったものなど多くのことを学べるだろう。それが共有できなければ、伴奏もアンサンブルも出来ない、しばしば、1番がメロディを弾くための空間を空けるように、と言われたが、今回は、その音楽が生まれる邪魔をするだけのアンサンブル?に終わってしまったと思うが、誠に申し訳ない。
個人的には、指を使わないボーイングというのに引っかかったので、懇親会の時に尋ねてみた。私の研究?では、弓の返しの際に小指の使い方が大事ではないか・・・とか、問題は固めないこと、腕・肘が主導するが指は柔軟に動きに任せることではないかとかなんとか・・、両方出来ると良いですね。との答え。このようなことは、他にもいえるけど、、相手に応じて基本の基が何より大事だと言うこともあるし、時と場合とによって変わることだし、一般的に絶対こうだと言うことは1つもない。どうでも良い、と言う言葉を演奏家からよく聞く(^_^) と言うことを理解した上で、今の自分の問題について対処することが肝心。
夜、バッハの1番のアルマンド、クーラント、サラバンドをさらってみた。特に、移弦の練習をした後、サラバンドを弾いたら、なかなか良くなってきた。レッスンでは、しっとり感がぁ・・と言われていたが、だいぶ落ち着いて演奏できるようになってきた。(と思う)
そういえば、とてもどうでもよいことだが、長谷川さんの弦は、見たところ、1,2弦がクラウン、3,4弦がラーセンだった。で、弦は、長くペグから飛び出ていた、張りを強くするためか、たまたまか、分からない。(ちなみに私は、ペグでチューニングするため、力が入りやすいようにペグの位置が弦に直角になるように調整して弦を巻き付ける、この場合、長さによってはペグから飛び出る可能性もある。しかし、長谷川さんのペグの位置は理想的な位置ではなかったから、ペグのために長さ調整した結果ではない、とみた) エンドピンは普通の細めの鉄製、ボルフキラーは、小さな円形のヴォルフエリミネーターだ。更に、これは感心しないが、弓は、松ヤニで半分白くなっていた。弦にも相当ついていた。掃除した方が良い、と言おうと思って忘れていた(^_^)
goshuさん、おはようございます。
移弦については、長谷川陽子さんのファンクラブFacebookに解説ビデオがアップされていたのですが、それだけでは良く判りませんでした。今回、直接ご指導いただき理解が深まった次第です。
ところで、ネットでダウンロードした楽譜についてですが、
http://www.ovationpress.com/p-37-suite-no-1.aspx
でダウンロードしました。価格は、$4.99でダウンロード画面から直接プリンターに出力します。プリントアウトすると楽譜の一番下に自分の名前が入っています。
投稿情報: ぱたぱた | 2014-11-21 08:11
ぱたぱたさん 貴重な情報ありがとうございました。フォーリー版だったのですね。移弦の練習は重音からと言うことでしょうか。そして一点を弦と直角に、これがすべて。弓の返しは、何もしないのがコツ。これが基本。基本と言うことは応用もあると言うこと。
投稿情報: goshu | 2014-11-21 11:06