先日、泊まりに来られたIさん、東京浅草で古物のお店「東京蛍堂」を経営しています。2回目の来訪ですが、色々楽しいお話しを伺いました。そもそもは、浮浪者からキャリアスタート(^_^) 最初は京都駅に泊まっていて住み込みの新聞配達から多種多様な職業を転々として現在に至り、まだまだやりたいことが次々へと浮かぶ。缶詰1つあればいろんなことができる、とも。浮浪者の工夫力?はすごいらしいです。いまは、社交ダンスのパーティをやりたい、とか。今時こんな人がいるんだ、と興味津々。まぁ、あのスティーブ・ジョブスだってヒッピーだったし・・みんなと同じ路を歩かなくてもいろんな生き方がある。
浅草はあまり行ったことがないのですが、調べてみるとおもしろいですね。超ディープな東京。大正ロマンの世界・・夏が終わったら、訪ねてみたいと思っています。。
初代のパブリカ(ドイツのフォルクスワーゲンを開発のヒントに日本の国民車としてトヨタが開発した車。空冷エンジンでパカスカ言いながら走る。デザインもシンプルでかっこよく、高校時代の昔憧れたものです。)に乗ってやってきましたが、いつ止まって動けなくなっても不思議でない、無事に東京に戻っただろうか。
ところで、このお店、大正ロマンの世界が1つのテーマのようですが、大正ロマンと言われる時代がどういう時代だったのか、どんな空気だったのか、それを素直にありのままに書きとどめておきたいと言うことで書かれた本があります。ドイツ文学者の手塚富雄さんの「一青年の思想の歩み」(昭和41年刊、講談社)です。この時代は日本のどの時代より(現代より)民主的な自由な雰囲気が支配していた。それが軍部によって次第に戦争に向かった。本はそこまでしか書かれていませんが、そして自由な空気は破壊され、戦争が終わっても破壊されたものは元に戻ることはなく、戦後民主主義とか色々お題目を言っているけれど、むしろアメリカ的に悪くなっただけとも思えます。憲法で保証されたはずのものが皆お題目だけで、政治家はそんなもの分かっていないし守ろうとも思わないできた、今の時代と大正ロマンの時代を比べて、その空気を知ることも大切かも知れません。今の日本が本当に自由で民主的といえるのか・・。大切なのはお題目の立派さではなくその時代の空気感、自由な空気を吸っていると思うかどうか。
古いものには、それ作ってきた人たち、それを使ってきた人たちの思いが、歴史が込められている。それを拾い集め、修復し磨き上げて、今の人たちにつないでいく、この古物商店はそういう店だと思います。懐古趣味に耽溺するのではなく、昔あったものの良さの本質を未来へとつなぐと言うこともきっと店主は意図して、志しているのではないかと思います。蛍堂という名には1人1人が真実の灯火を持って集まるという深い思いがあるのではないでしょうか。世の中は暗い閉塞感が漂っているけれど、その中でも善い人のネットワークは作っていかなくては何もおもしろいことはありません。私は、政治家のように大言壮語することもできないし無力な凡人ですが、自分の一番好きなこと、たとえばチェロを通じてそういうことができれば良いなと思っています。1人の人間が世の中を変えるなんてことはなかなかできませんが、数人の人に影響を与えることはできる、ま、その程度だろうし、それはきっといつの時代にもそうなのでしょう。そう言う細々とした明かりが無数に集まってほんのり少し世の中を照らしている。
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