チェロを置くとき、右側(魂柱側)を下にして横置きすることが常だから、床と当たる部分のニスが段々剥げてくる。なので、たまに、その部分だけニスを塗る。このニスは、以前修理したとき職人さんがこの楽器に色合わせして調合したものを分けてもらっておいたもの(硬くなってきたら無水アルコールで薄めれば良い)。3日位かけてゆっくり塗り重ねる。最後は皮で擦って仕上げ。
ところで、ご存じだろうが,何故右側を下にして横置きするかというと、魂柱が落ちないようにするため。楽器は中央が膨らんでいるから、右側(魂柱の立っている側)が下になっていれば,狭い方に魂柱が落ちるリスクは少ないからだ。とくに乾燥しているこの時期、ちょっとしたことで魂柱が外れて倒れる危険もあるので、決して反対側に横置きしてはいけない。
なお、乾燥のこの時期、ケースに入れておいて開けたら弦がゆるゆるになっていた、とか、ひどい場合は、魂柱まで倒れた,ということも起こりうる。長期間放置する場合は、ケースは立てずに横置きにしておく方が安全だろう。私の場合は,モイスレガートをケース内に貼り付けているせいか,そういうことはこの10年くらい起きていない。
それと、ペグを使って調弦するようにして、ペグの状態を真円に近い形に保っておけばペグが一気に緩むこともないのではないかと想像する。 ペグも木で作ってあるので,一方方向にだけ張力が掛かる状態が長くなれば,ペグも穴も断面が楕円形になり、それが動けばペグと穴との接点は限りなく点に近くなり,ちょっとずれたら一気に外れてしまう。ペグは,「ぬるりと回ってぴたりと止まる」真円で穴と合っている状態にしなくてはいけない。ガット弦を使っていたらしょっちゅうペグを回して調弦するが、スチール弦の場合は弦が伸びないのであまりペグを回さなくなるので真円を保つ事は難しい。なので、数年前穴を削り直して調整してもらった。先のニスは、その時、再塗装したので、そのニスを分けてもらったのだ。
ついでに、このペグ穴はペグを回して擦っていけば段々広がっていくのが道理なので、一旦穴を木で埋めてから削り直す。職人さんは、穴を細めに先端を少し細くなるようにしてくれた。こうしておくと力が掛かりやすくペグの回転が楽になり,スチール弦の場合、微妙な調整がしやすいとのこと。
職人さんというのは,こちらが何も言わなければ何もしない,ここがおかしい,困る、何とかしたい、などと申し出ると,ではこうしてみましょうか,と対処してくれる。こんなに具合が良いものなら最初からやってくれよ,といいたい所だが,何事もそうだが,悩みのない所に解決もない。絶望がなければ救いもない。仏教では,発心即菩提という。キリスト教では,求めよさらば与えられんという。これはチェロのレッスンでも同様だろう。自己満足している人に何も教えることはない。自分が何をどうしたいのかが分かっていない言わば意識不明でぼーっとレッスンに行って何するのか・・。
私から見ると,沢山の人が楽器に無頓着だと思う。上手に弾けていれば良いということもあるだろうが,考えてみると私の場合チェロはペットと似ている。単なる道具ではなく,愛玩物?だ。血統書も市場価値も関係ない。 カメラ好きは、用もないのに暇があると愛機を磨いていたりする。無駄な事である。無駄な事を一生懸命やるのが趣味・道楽(趣味と生活が逆転した場合)の世界だ。ちなみに、ペンションに音楽ホールを作ったとき音楽堂ではなく道楽堂と揶揄されたが、気が付いたときは時すでに遅し(^^;)
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