私の通った中学校は渋谷区立原宿中学校(今は廃校)、入学した時は外苑中学校原宿分校で、2年の時に独立して、校章や校歌が作られた。そんな出来たばかりの学校だから、図書室と言っても形ばかりで8畳くらいの部屋の片面に本があるだけだった。ある日、何気なく本棚から学生向けの法律の本、確か皆の民法、というようなもの、を読んだ。これが大変おもしろく、道路交通法とか、借地借家法とか、手当たり次第に読んだ。そのうち、そうした法律の元になる日本国憲法というのがあると知って、憲法を読んでみた。
これは、実に衝撃的だった。
第一に驚いたのは、義務教育ということについてだ。それまで、子供は義務教育だから、学校に行くのが義務だ、イヤでも行かなくちゃ行けないのだと思っていた。しかし、話は全然違う。国家が親が子供たちに教育を平等に受けさせる義務があるということだった。子供が学校に行くのは権利であって義務ではない。本来学校は楽しい所だし、上から何かを押しつけるような類いのものではない。
憲法は、中学生でも十分理解できる日本語で書かれているから、何故そんな細かいことまで言うのか分からない〔多くは表現の自由に関する項目だ)事もあり、それを理解するにはまだ時間がかかったが、ともかく、憲法を読むにつれ、日本は何と良い国なのだろうかと思った。心が震えるほど感動した。初めて大人はすごいなとも思った。そして同時に、日本の政府も学校の先生も、ちっとも憲法について知らないらしい、その根幹を理解していないし、無視しようとしている事に憤慨した。憲法の前文だけでも読めば、どうしなくてはいけないかは分かるはずだ。ところが、政府は、憲法について国民に知らせたり教育していくという態度ではない。憲法記念日はあるがおざなりだ。中学校では憲法の授業があっても良いのに、そういうものは一切ない。後から知ったのだが、自民党はこの憲法を無視して戦前の明治時代の帝国憲法に戻したいらしい(簡単にいえばそういうようなこと)だから、私は50年間自民党には1度たりとも投票しない。個々の政策などは実際の所官僚が上手くやってくれれば良いのだし、試行錯誤して学習され洗練される内容だ、所詮命取りにはならない、が、政治家の憲法観は個人の自由と尊厳に拘わる根本的な問題だ。
その当時「朝日訴訟」というのがあり、憲法第25条(全て国民は健康で文化的な最低限度の生活を有すると生活保障を規定したもの)が話題になっていた。これに限らず憲法は読めば誠に厳粛な内容である。現実には難しい問題がありながら、しかし、理想として国のあるべき姿を示している。できの悪い下品なおじさん達が軽々しくあれは良いこれは駄目だなんて言えるものではない。
あんまりおもしろくない話なので、おしまい。
コメント