昨晩は、ゴーシュホールにて、パリ管チェリスト佐藤 光氏によるチェロコンサート。バッハの無伴奏チェロ組曲第2番と第4番。そしてコダーイの無伴奏チェロソナタ。柔らかく静かに弾き始められた2番のプレリュード。満席のお客様はその暖かい慰めるような音色にうっとり。
その時の事をふと思い出した。習い始めて3年目くらい、バッハの無伴奏チェロ組曲第3番のブーレを習っている時。後半の短調の部分を弾いていたら、苦しそうな顔をして「・・ちょっとやめて下さい・・その音を聴いていると、秋の墓場で風が吹いているような感じがします・・・音楽はもっと暖かいものではないでしょうか・・」と言われた。まだ芸大の学生で、パリに留学する直前の頃だったと思う。そのとき、あぁこの人は芸術家になる人だ、と思った。
当時芸大に客員教授としてフランスから派遣されていたレイヌ・フラショーさんの手引きで、在学中に国費留学生としてフランスに渡り、パリ音楽院でアンドレ・ナヴァラに師事し、その後ニースのオーケストラに所属しながらトルトゥリエに習い、パリ管に日本人最初のチェリストとして入団、それから38年、パリ郊外に家を持ち、夏のバカンスシーズンだけ日本にやってくるようになった。
バッハの2番は、唯一の短調で書かれた組曲。日本人好みとも言われているが、感傷に溺れずこんなに暖かい音色で弾かれることもないのではないだろうか。作り物でない精神的に豊かなバックボーンを感じる演奏である。
音楽とは関係ないが、奥さんから毎回フランス人と日本人の文化・習慣の違いなどを色々聞かされるが、そのいくつかを・・
1)フランスでホームパーティに招待されると、食卓がセットされていて、マダムがどうぞお座り下さい、と言うが、その言葉を真に受けてすぐに座ってはいけない(^_^) 。マダムが着席してから指定された場所に座る。大概主賓はマダムの右隣。で、夫婦もばらばらに座って他の方との会話を楽しむ。料理も、マダムが食べ始める前に食べてはいけない。・・
2)食事中は、人の悪口とか決して言わず、楽しい事、料理のことなどを話す。よろしくないことは食事の前に話す。食事中は楽しい事だけ。
それと、今回の大震災、フランスでも多くの人が我が事のように日本のことを心配し、何とか助けたいと思って、チャリティコンサートが企画されて通常より沢山の人が集まって寄付したり、パリの全区の役所には募金箱が設置されて寄付が集められた。しかるに、日本政府!チャリテイの集いをやる際に大使館に声を掛けても、誰も来ない、そして、そんなことはやめて欲しい、日本は後進国ではないから援助は必要でない、というようなことをのたまった、と。 また、アメリカがガイガーカウンターを提供しようとしたのを断ったとか、フランスの援助隊が何も出来ずに帰国したこととか、ニュースで流されて多くの人が知っている・・
フランスに住む日本人は、このような事や、ニュースでも取り上げられる日本の首脳の記者会見など聞いていると恥ずかしくていたたまれない。国を代表するような立場の人達は、世界を相手に言葉を発する自覚を持って欲しい、レベルの低い内々の話などしないように、いまや世界中が見たり聞いたりしている時代なのだから・・。
本当に素晴らしいコンサートでした。ニ短調の最初の音から素晴らしい雰囲気に包まれました。ホールも楽器の一部になって素晴らしい音響に包まれていました。コダーイは私には聴くだけの曲ですが、佐藤さんの演奏はプロならではの素晴らしい演奏でただただうっとりと聴いていました。goshuさんCDにしていただけませんかねェ。何回も聴きたいと思いました。
投稿情報: ミゲル | 2011-08-12 09:03
ミゲルさん こんにちは
録音は、すぐ削除して下さい、と佐藤さんに言われました。私には何が不満なのか分かりませんが(^^;) 勿論削除しませんが、人に聞かせもしないで、一人で聞こうっと(^_^) 昨年、私がお気に入りのソナタの録音をあるホールを借り切って行ったのですが、演奏以外の理由で録音がうまくいかず、CD制作を断念。再挑戦したいと思います。楽しみにしていて下さい。
投稿情報: goshu | 2011-08-12 09:53