先日書いたお勧めのスケールとアルペジオ、調べたら、トルトゥリエの教本「私の演奏法・教授法」P92から95にちゃんと楽譜が載っていましたので、そちらを紹介することにします。(写真は第1版のもの)
内容は高度だし、載っているエチュードも簡単とはいえないが、実に懇切丁寧で、初級者はこれが大切だと言われてもぴんとこないだろうが、これを理解して(!)練習したら確実に上達すると思う。
トルトゥリエのこの本には、肉体的弱点と「戦う」方法、精神的な弱さを克服する楽な練習法とか、それまでに出会った沢山の弱点を持った生徒の矯正、指導の経験に基づいたらしい愛情に満ちた教授法がちりばめられている。細かなことを丹念に注意して書かれている。もう少しわかりやすく言葉を多くして書いてくれればもっと真意が伝わりやすいのにと思うところがあるが、ともかく、書かれたことをないがしろにしないでついて行ったらきっと良いことがあると思う。
さて、このスケールについて書かれたところだが、4オクターブのスケールを早い段階から練習するように勧めているが私も全くそのように思う。最初は大変に感じてもちょっと辛抱すればどうと言うこともなく出来るようになると思う。親指ポジションのところで停滞して、Aのところに親指を持って行く練習ばかりする人がいるが、そういう風に硬直化しないで一気に4オクターブに慣れる方が絶対良い。下手なこだわりはこわばりに通じる、一生懸命やると言うことは気をつけないとそうなる。日本人は「一生懸命」が好きだ、たとえ間違っていてもそっちを尊ぶ傾向がある。そんなんでないんです。
トルトゥリエがいうハイポジションの考え方のおもしろいのは、指板はピアノの鍵盤と思って、(音を探るのではなく)あたかもそこに鍵盤があるかのように、「親指をくぐらせる」と言う発想。そういう意識を持つことはだいぶ違う結果になると思う。
「親指を早くから使っていれば割合早く4オクターブの音階に到達することが出来る・・4オクターブの音階とは・・良い運指法を使わなければ怖さを感じさせることになりかねない。」ということでどの音階にも単純で同じような運指法が使えるように工夫されている。それはそうしなければ、いつまでも安全で易しいものしか練習しなくなるからである。トルトゥリエのスケールは、どの調でも同じ運指を使えるようにしてあるので1つ覚えれば後は楽譜を見なくても弾ける。これは以前紹介した。
私がそうなのだが、この本には沢山のエチュードが載っていて、特にぐだぐだこれがどんなに有用かなんて(私と違って)書いてない。だから、この本を購入してぱらぱらみても何もぴんとこない。宝の持ち腐れだ。でも、レッスンでそのポイントを少し教えてもらったら目から鱗、と言うようなありがたいものだ。このスケールやアルペジオも、ありがたいものだと思って毎日練習に使ったら本当にありがたいものになる(^_^) 私が思うには4オクターブのスケールも良いが、アルペジオならポジションや指の形などの確認が時間が短縮できるしストレッチにもなるので、指ならしとして毎日毎回使えると思う。
私は現在、トルトゥリエ校訂のバッハの無伴奏を練習しているので、トルトゥリエがどんなに親切、懇切丁寧に教えているか分かる。なるほどと分かってからこの教本を改めて読んでみたら、本当にためになることが次々と発見できる。この本は読み物ではなく教本なので実際に楽器を手にして音にしてみると言うことが欠かせない。やってみて初めて何を言ってるのか分からないとか、納得できるとかびっくりするとかがあり前進できる。
コメント