これまで長年チェロ用の椅子(ベートーベンの形)を使っていたが、あるとき、演奏ビデオを見たらずいぶん高い気がした。エンドピンをどう調整しても楽器に左膝の当たる部分が不安定だ。そこで、思い切って足を短く切ることにした。木の椅子だからこんな事も出来る。失敗しても継ぎ足すのは簡単だし。
チェロを練習するときは、いつも同じ椅子(同じ高さと座の傾き)、同じ長さのエンドピン、同じエンドピンストッパーの位置、に固定して練習しないと効率が悪い。
これまで使っていた座の高さは43 cmで標準的なものだが、試しながら少しづつ切って41cmにした。これでモモが床と平行から少し先が下がった状態。だいたいこんなもの。座ってチェロを構えると、両膝で楽器をしっかり支えることが出来、ネックの4弦のペグが耳の後ろに来る、両腕の重みも自然に乗る感じで、すこぶる具合が良い。あまりぴったりとすると、靴を履いたとき、クッションを乗せたときなどで又調整がいることになりきりがない。まずは、これで汎用性が保たれる。エンドピンの位置も変わらないように、桧の壁材の余ったものを切って自作した。ベストポジションになるようにひもの長さを調整。エンドピンも決めた長さになるように鉛筆で印を付けた。
ちなみに、私は、歳をとっても楽に弾けるように、習い始めからカザルスの演奏姿勢(ちなみに、この写真は、我が恩師の故佐藤良雄先生がプラドのカザルスの部屋で撮影されたものである)を模範としている(左膝は、くぼみ部分の出っ張りの少し上、右膝は、少し下を保持する)が、しかしカザルスより足が短い私は、そのように構えるためには椅子の座の高さを40cm位にしないと膝の位置が決まらない、しかし、そうすると低すぎて演奏姿勢としては問題がある。で、試行錯誤の結果が今の状態。
よく、楽器の調子が良いだの、体の調子がどうのと思うことがあるが、良い音がするかどうか、弾きやすいかどうかは、そういうこともあるだろうし、色んな要因が考えられるが、正しい楽器の位置、正しい姿勢を保つ事は大きな要素だと思う。これが毎回微妙に異なると毎回違う楽器を弾くように居心地が悪いものだと思う。
さて、それで、まだ練習中のバッハの4番のプレリュードを弾いてみた。よいよい。この曲、音程が微妙に変化して難しいし、楽器の保持がちゃんと出来ないととてもストレスなのだ。それが、重みの乗った良い音で弾けるし、何より安定して練習できる。もっと早くやるべきだった。
この椅子は、チェロが趣味であるデザイナーの作品である。背もたれが、このベートーベンの他、ショパン、バッハ、モーツァルト、リスト、等々数種ある。20年以上前、偉い先生の前でベートーベンを弾く事があり、藁をもすがる気持ちでこれを購入したのだ。キャッチコピーが「作曲家の後ろ盾で弾く」というもので、すぐに買ってしまった。そっちの効果はなかったが、足と背を簡単に外せて持ち運びできるので、重宝している。
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