「チェロの日」2日目の昼過ぎ、サントリーホールリハーサル室にて、倉田澄子+宮田大氏によるチェロゼミナール(Cafe Sumiko溜池店?)が行われました。その中で、印象的だったことをいくつかメモしておきます。
いくつかの質問のうち、色々な先生について色々な異なる意見を言われた場合どうするのか、という問いに対して、宮田さんは、それは違うとして排除したら自分が小さくなってしまう、なるべく言われたことをできるようにやってみる・・とのこと。また、今後5年後30年後どういう奏者になりたいかという質問には、先のことではなく30歳の今自分ができること、今でなければできないことを精一杯やろうと考えている。そうして自分の器(層?)を少しづつ大きくしていきたい。そのほか、様々な話題に宮田さんの謙虚で真摯な人柄、自分を過大評価も過小評価もしないで成長すべき自分を客観的に見ることができる賢さ、今の立ち位置などが随所に表れていて素晴らしい事でした。今最も充実して伸びていく才能に触れることができたようで、嬉しくなりました。
倉田先生も、いつものことですが、なんだかお得なレッスンをただで受けたようで、弓の返しのコツなど、短い時間にこれまで以上に詳しく惜しげもなく企業秘密を説明して下さいました。頭で理解してもなかなか実行が難しいのですが(宮田さんもまだまだだといっていました。)注1、いつも少しづつ心がけてみたいものです。初めて聞いた人には分からないでしょうが、その指導や言葉には研ぎ澄まされ凝縮された内容が詰まっていていささかも無駄や余計なことは入っていません。最低限これだけはやれと言っているのです。柔らかい言葉でお勧めしているだけですが・・。
それから、五郎丸みたいに(^_^)練習の前の、演奏の前のルーティーンのようなものはあるかとの問いに、お2人とも、解放弦で楽器をロングトーンで鳴らしてみる、ということでした。ストレッチのためのエチュードやスケールなどやることもあるが、それ以前に。良い音、目指す音が出せないとその先に進めない、というのは倉田先生。(これは異常なほど、らしいです)
楽器を十分鳴らせるような体を準備していくということもあるのでしょう。解放弦でのロングトーンの練習、心して味わってみたいものです。(最近私が心がけていたことだったのでもっと身を入れてやってみよう)
また、宮田さんは、音色ということについて(音楽や楽譜に書かれた音をどう感じるかどう読み取るか?)メロディを歌ってみて「ラララ〜」としか歌えないのでは駄目、「擬音語のボキャボラリーを増やす努力、その音がズーなのかデゥなのかドゥダディ〜なのか、追求する」というようなことを語っていました。それに関連して倉田先生からトルトゥリエの「音楽で一番大切なのは、リズム、1にリズム2にリズム、3,4がなくて5にリズムだよ」との言葉を紹介されました。(それがその音の質に関わってくる、と言うこと?)
まだまだ短時間に沢山の事を話されたのですが、実際その半分も理解していないのでしょうが、久しぶりに身のある楽しい時間でした。宮田さんのリサイタルが9月10日にサントリーホールであるそうで楽しみです。
注1:ちなみに倉田先生も宮田さんも(私も(^^;))楽器の調整を任せている職人さんの話では、弓の毛替えの時に感じる事として、宮田さんも最近は合理的な運弓ができるようになっているようだとのこと。つまり、金魚すくいと同じで、名人は紙を破らずに沢山の金魚をすくうことができる。合理的で紙に負担を掛けない方法・・・。
この日も職人さんは演奏会場に来ていましたが、毎回来て楽器の状態をチェックしたり不意の出来事に対処する準備をしているようです。無報酬でのそういう努力や沢山の事が演奏を支えている・・そういうすべての人の思いを乗せて演奏する、プロは勿論ですが、へたくそなアマチュアだってよく考えてみればその恩恵を受けている。そのすべてがチェロをやっていることの喜び、楽しみにつながっている。今から、200年も前の作曲家の曲を同じように古い多くの人から手渡しされて維持されてきた楽器を使って演奏できるなんて、素晴らしい事ですね。
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