沢山の人がビブラートが出来ないといっている。私は、習い始めて半年くらいから自然にビブラートが出来るようになったから、とりあえずは苦労していない。ビブラートは生まれついての一種の才能だ、習うもんじゃない、と言うのを聞くとそりゃそうだな、と思っていた。
でも、いくら実地でつきっきりで習っても出来ない人がいる。出来たと思っても、本人が出来たと思っていない。だから、しばらくすると元の木阿弥。このことは、色んな技術についても言えるのだろうけど、隣で聞いていて、「出来た」「良い音」「それで良い!」といくら思っても、当の本人に自覚がなければ、頭で理解できなければたまたま偶然出来ただけで、出来たことにもならないし、再現も出来ない。先日の人も言っていたが、チェロを弾くって頭を使わなくちゃダメ、なのだ。損得計算とは別の頭の良さが必要。(そして頭の良さの半分は感受性の良さだと思う)
それはどういう事かというと、まず、例えば、ビブラートについては、本人の望むビブラートというのがあって、それができていないとできたとは思えない。甘くキラキラするようなビブラートが出したいと思っていると、自然で豊かな響きを作る事ができたとしても、そんなものは欲しいビブラートでもないから、できないできないと思ってしまう。もう1つの問題は、そういう先入見もあるのだろうが、ビブラートできたとしてもそれを自分の耳で聞き取れない、と言うこともあるようだ。先ず、もっと自分の出している音をよく聴いて見ると言うことが重要。周りで聴いている人がいくら、今のは良い、美しい、完璧と言っても、当の本人は気づいていない。出来ているのにそれに気がつかない、これは致命的。
私は、ビブラートについて、あまり悩まない。というか、派手な効果的な?ビブラートに余り関心がない。演歌歌手のようなワンワン言うビブラートを好まない。非音楽的で無意味で品がない。いつもより沢山回しておりますと言って拍手をもらうようなものだ。島倉千代子さんもご免だ。
私は、ビブラートとは、基本的に、モノラルからステレオになった効果と同じだと思う。
日本にステレオというのが入ってきたのは、私が中学生の頃だ。小学校の時はまだSPレコードの時代で、鉄針でゼンマイを回して音楽を聴いていたものだ。そして、その後、LP となりすぐステレオの時代になった。当初のレコードは、ステレオ=左右から別々の音がする、と言うことが強調され、ジェットコースターとかクラシックでもチャイコフスキーの「1812年」など、左からフランス、右からはロシアの音楽がはっきり分かれて聞こえてくる、と言うものだった。段々、そういう物珍しさではなくて、他のもっと本質的な要素が大切にされるようになった。それは、臨場感、立体感、音の豊かさ・柔らかさなどだ。私は、ビブラートの効果とは、音が柔らかく伸びやかに豊かに響くことが一番だと思っている。ぐらぐら揺れるなんて事は1812年的な事だと思う。だから、派手にワンワン言う必要はないし、カザルスの演奏を聴いていてもそう思う。そして音の豊かさを求めるなら、指で弦をぎゅーっと押さえつけるのは響きを殺してしまうから、音が鳴る限界まで緩めてビブラートすることもコツの1つだと思う。点ではなく面で弦を押さえると言うこと。出来ない人はきつく押さえて力任せに腕を振って無理矢理ビブラートしようとしていて、逆効果だ。どういう音を求めるかというそもそもの考え方が間違っていると(私は)思う。
勿論、そういう自然な響きを大切にするビブラートの他に、色んな種類の効果も必要だとは相当後になって教わったし、今も練習しているけれど。それに、自然と言っても気ままというのは音楽的ではないし、意識しないようでコントロールすると言うのが大事。
で、たとえ、自然なビブラートが出来ても、CDやプロの演奏で聴く派手なビブラートをやりたいと思っている人は、たとえ、美しい響きが鳴ったとしても、それでは全然良いとも思わないし満足できないのだろう。出来ないと思い続けるのだろう。一生懸命腕を振って無理矢理ビブラートしようとしている痛々しい?姿を見ると、ビブラートなんか出来なくても良いじゃないか、と思ってしまう。ビブラートはとても大きな表現の武器だとは思うが、もっと大切な事は音楽の骨格だと思うし、魂を揺さぶるような演奏はビブラートや美音に頼って出来るものではないのだから。昔のモノラルで音も良くない録音を通してしか聴けない往年の大家の演奏を聴くとそう思わざるをえない。
それはともかく、どういう風に腕を振るのか、それは色んな方法が公開されているから動きについてはそういう風にひたすら腕を振ってれば良いだろう、けれど、自分の音をもっと聴かないと・・。音程だって正しくとれて他の開放弦が共鳴していればビブラートの効果も聴き取りやすいけれど、少しでも狂っていると振っている腕が痛々しいだけだ。(見た目痛々しい理由は、大概、いかにもビブラートするぞとばかり肘を上げ過ぎだから、もっと肩の力を抜いて(^_^))
とかなんとか段々悪口っぽくなるのでほどほどにしておこう(^_^)
苦労しなかったことを人に教えたりコツを伝えたりするのは難しいし確信が持てないが、腕の振り方を覚え少し練習したら、もうそれ以上ビブラートを意識しないで、ただもっと歌いたい、広がりのある音を出したいと思って両腕の力を抜いてただ音楽を感じる様にしたらそのうち自然に出来るのではないかと思うのだが・・。
ビブラートしやすい曲というのも人それぞれにあると思うが、私のお勧めは「夢の後に」だ。これはどうしてもビブラートせずにはいられない、それにある程度のスピードを持って上行しそして音を伸ばすと言う動きがビブラートしやすいと思うのだが・・どうだろう。他の曲でも、やりやすいのがあれば、テクニックだけでなく音楽的にも歌いたくなるような曲があれば自分の得意曲で練習すれば良いと思う。逆に 何でもかんでも機械的にビブラートしようというのは力ばかり入ってしまう気がする。出来るところ気持ちの良いところだけやれば良い、いつもいつも全部やることはない。無理は禁物だ。ホンの1音か2音でも良い、そのうち体が覚えて段々出来るようになると思う。他の技術と違ってビブラートは機械的に練習するものではないと思うから。
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