古い音源は全てがデジタル化されたわけではないので、かなりの部分が消えてしまっている。聞きたいものが沢山あり、近頃それが増えてきたので、機器も復活中。上から、ダイレクトドライブLPプレイヤー、DVD,SACD,CDプレイヤー、普及型プリメインアンプ、MDレコーディングプレイヤー、セットデッキ。一番下は,レコードを掃除するための小道具の数々。
これらのものをかき消したのがAppleのiPodだった。Appleの先見性はハードディスクに音楽ファイルを詰め込んだことではなく,インターネットとつながったと言うことだ。当時の音響メーカーにはそういう発想はなかったと思う。
部外者の強みと言うことだろうか、インスタント味噌汁を作ったのは、味噌メーカーではなく、お茶漬けの永谷園だったし、時代のニーズを的確に捉え,「ホンモノ」にこだわらず先入見なく自由な発想で商品を開発する。
それはともかく、近頃はアナログがあちこちで見直されていて、郷愁の部分もあるだろうけれど、「ホンモノ?」志向ということもあるのだろう。ホンモノ、とは何だろうか,何が本当にホンモノなのかなんて分からないと思うが、個人が感情的に腑に落ちるものをホンモノとして納得して受け入れると言うことだろう。何が良い演奏、何がホンモノに近い音なのか、そんなことは分からないが、私が思うにホンモノというのは、自分が心から受け入れられるもの、感動を与えてくれるもの、と言うことで、客観的に判断評価できるものではないと思う。だから、人により違うし、人の数だけホンモノがあっても良い。逆に言えば、それだけの許容力を持たないものはホンモノになれない。アナログレコードは、ノイズ成分が多く,逆に聴く方が,その中からホンモノの音楽を聴き取ろうとする。BGM的に聞き流すなら、iPodとかCDのほうが良いし、実際そういう聴き方になっているはずだ。作り手の創造力と共に聞き手の想像力も大いに働いていると思う。これが音楽に豊かさを生み出す。
・・とかなんとか、ともかく、アナログ音源を聴くのは,結構楽しみなものだ。ホンモノとか関係なく,それでしか聴けなくなったものを聞くのは,懐かしく,それだけで豊かな時間が流れる。
昔は、レコードを1人でも聴くが,親しい友達と一緒に聴いたりしたものだ。デジタル時代になってからは,1人でイヤフォンで聴くのが一般的になったのではないだろうか。簡単に音楽ファイルをダウンロードしたりメールで送ったり、友達が5人いてもあっという間に皆に配布できて,それぞれで聴けば良い。わざわざ集まって厳かにレコードに針を落とすなんて事は必要なくなった。しかし、それだけでも音楽体験は貧しくなっていると思う。なぜなら,音楽の本質の1つは人が一つになるということにあるはずだから。SP時代のレコードの聴き方はもっと濃いものだったようだ。待望の新しいレコードを入手して皆でホールに集まって聴く、その時の熱狂振りは想像できないほどだったようだ。飽食の時代、そんな話を聞けば、ばっかじゃないの,と言われるかも知れない。ま、そんなのが良いとは言わないが,便利さが楽しさを減らしてしまうということはよくあることだ。カントも最良のコックは空腹である,と言っている(^_^)
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